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おはなし

little snow

ツヨシは、平凡な中学生だった。喧嘩が強いわけでもないが、いじめられるわけでもない。言い返すタイプの少年だった。ただ二歳上に姉がいて、中一の頃から人脈はあった。もしかしたら快活な少年に見えたのかもしれない。

告白されてしまった。学年で一番勉強のできる女子に。他人が嫌がることを言わない、それがきっかけだと言う。ツヨシなりに一番気を付けていたことを好きになってくれた。

ツヨシは勉強をするようになった。理由は少しでも恐怖とたたかいたかったからだ。彼女は、親でも見落とすようなことを、先回りして、ああしたらいい、こうしたらいいと言う。それも非常に手短な言葉で言う。人間というものを、悪く言えば感じ取れない、そのような日本語のやりとりがたまにあって恐怖だった。

ツヨシは、自分の役割は習うことなくわかった。彼女が同じような口調で男子に物申してしまって、危ないと思った、しかし嫉妬心もかなりあって、止めに入ることはできたが、後で電話で口喧嘩をしてしまった。

しかし、ツヨシは日頃、「なぜそこまで有難いのか。」と彼女の言動に感謝するようになっていった。「俺なんかが、俺なんかが。」と言いながら必死で勉強して高校は県下有数の男子校に入った。入ることができた。

高校で出会った友達に対しては、第一印象、すごく嫌な言い方だが、「違う動物の群れに混じった。」と思った。まず5㎞のジョギングが速い、部活ではなく体育の授業で、である。1500m走もクラスで最下位だった。

早い話、勉強についていけなかったツヨシは、別れてしまった。同じ年の10月、ある日、なにもかも壊れるくらい怒ってしまった。彼女のほうは、その後何度か連絡を試みたと後で知った。

クラスメイトの国松が、しばらくしてカラオケに誘ってくれた。

「俺が行くんだから、可愛い子が来るんだろうな。」

とツヨシは言った。ツヨシはくだらない人間にでもなったつもりだった。

「田中君は三股までかけたことがあるから、良くも悪くも君付けされちゃってるんだからね。」

と悪ふざけの口調で返された。田中は背が高く、体重も70㎏あるが端正な顔立ちのイケメンだ。10月に入っても仲間から君付けされている変わった人だ。成績は真ん中くらいなのか悪いのか、よくわからない。

当日の集合場所で、田中に言われた。

「あの真ん中の背が高めのヒョロっとした子が気に入ってくれてるから、俺からの命令として、今日ちゃんとやれ。」

あとで確信するのだが、ツヨシは、田中からは親しまれていた。そういえばツヨシ目掛けて歩いて来られて、話しかけられたことが何回かある。成績最下位のツヨシは、クラスメイトにとってある意味希望だった。この半年間、同じ苦しみの生徒もそうだが、そこまで下を見て喜んでいるわけでもないが、とにかく希望だった。「ツヨシ君には彼女がいる。僕にも彼女が欲しい。」と安易な希望を抱くための客体だった。そして、ツヨシがフラれた話は、「星の消滅」だったのである。

真ん中の女子はチヒロという子だった。栗色のロングヘアで、ツヨシをすでにじっと見ていた。ツヨシは、田中の「ちゃんとやれ。」を信じ切った様子で、

「可愛いじゃん。」

と言い、前カノと付き合っていた杵柄もある、自分はできる、今日は楽しませてもらおうと思った。ツヨシは、一年以上、前の彼女と仲良くやってこれたものだから、行儀作法というべきか、接し方を知ってはいた。そういう意味合いの経験値のある接し方、で、留めればいいものの、どんどん悪乗り、悪ふざけをしてしまい、抑えがきかなくなり、「もう、付き合っている」かのような態度にも差し掛かってきた。そのようなツヨシの挙動に、田中は、「今後考え物だ。」と思ったが、男子らの結論は「封印」というものだった。

二時間の遊びが終わるころ、チヒロだけトイレに立つと、さすがに周囲に目をやるツヨシに、国松がジェスチャーで「行け。行け。」と言う。ツヨシが後を追って廊下に出ると、チヒロが廊下で立っていた。直立した姿が綺麗だなと思う、ツヨシ。うつむいて、壁に寄りかかっているのか、いないのか、というチヒロ。二人でしばし無言になってしまった。ツヨシはチヒロを見ているが、チヒロは床なのか、壁なのかわからない位置を見てじっとしている。「トイレ。」と言って出て行ったが、涙ぐんでいるのか、いないのか、というチヒロ。

「ほらっ。」

ツヨシは、少しひきつった笑顔で携帯電話を取り出す。

「メールアドレスを交換しよう。」

と言いながら、つい先日まで前の彼女のツーショットプリクラが貼ってあった携帯電話を、差し出すように、見せた。あまりにも無残な数ミリのはがしそこないも気にせず。チヒロは、無言でうなづくと、気の利いたことも言えない自分を、あとからじわりじわりと責めながら、しかしプリクラの無残なはがしそこないには、笑いがあとからじわりじわりとこみあげてきて、

にかっ

と、自分の携帯電話をポケットから出すとき、笑ってしまった。

二人は12月に、初めて手袋越しに手をつないだ。一瞬ふざけて笑ったら、そのままグイっと腕を抱えられてしまって、ツヨシのほうが「痛い。」と言う。ピンクのマフラーが肌色をしているチヒロが綺麗だ。

ツヨシは、抱きしめたいと思った。

「『雪が降ったらいいな』のおまじない。」

そう言って、グッと意気込むと、チヒロは感づいたように、はっとした。ツヨシは、思わずコートの端っこを握りこんでしまった。すると少し沈黙してから、チヒロは言った。

「大人になってく。」

ツヨシは、ボケっとチヒロのへそのあたりを見ていた。チヒロは、

「大人になってく。」

ともう一度言うと、嬉しそうに笑ったまま、

ぺんっ

と、コートの端をつかんだツヨシの手を、体ごと旋回して弾いた。思ったより、勢いがついてしまった。ツヨシは、一瞬、氷漬けにされたように「ひやっ」とした。してしまった。重く冷たい氷が急に背後に現れた気がして、勢いのまま、チヒロを、

ぎゅっと、抱きしめた。

チヒロは、初めて男子の体温と、思ったよりずっと固い骨を感じた。ツヨシは、チヒロの、もっとずっと友達のようにいたい気持ちのほうを、そうと知ってか知らずか、固く抱きしめたのだった。振りほどくように唇を重ねたのはチヒロからだった。

ツヨシは、

「背が高いですね。ピンクのマフラーも、また着ていただけたら、わたくしは何度でも美しいと言って見せましょう。」

と、かしこまって言った。

チヒロは笑った。笑って、気恥ずかしそうにしていたら。チヒロの携帯電話がマナーモードで鳴り始めたので、また、にかっと笑って、言った。

「雪が降ったら何するの。」

ツヨシは、

「好きだよって、しっかり、言ってみたい。」

と言う。

チヒロは、キョトーンとして、半分はわざと、

「好きだよ。」

とそのままの顔で言った。

(おしまい)

キャプテンパティシエ

夏の甲子園。
準々決勝で散った花巻巻東(はなまきまきひがし)高校の主将・持田権蔵(もちだごんぞう)。
プロ注目の高校生スラッガーだ。
チームメートが悔し泣きする中、父親ゆずりの強面の地顔でひときわ号泣していた。

「優勝しなきゃ、優勝しなきゃ意味ねぇんだ。俺たちの今までは意味ねぇんだ。本当に頑張ったから悔しいなんてサッカー部みたいなこと言わないでください。本当に頑張るなんて当たり前です。本当に頑張っても優勝しなきゃ意味ねぇんだ。さっきまで途中だった。うーん、どうしてだぁ。」

試合後のインタビューでも報道陣にそう答えた。

そんな持田権蔵はお菓子作りが趣味だ。
父親ゆずりの強面の地顔からは想像もつかないプリティなパフェをプロ顔負けに作って見せる。
秋葉原のメイドカフェのような台詞回しで部員に配るのが恒例だった。

はーい♡
皆さんお待ちかね!
クマさんが超絶プリティなイチゴプリンパフェ♪
人数分あるから食べちゃって欲しいな!

この日の夕方も宿舎でイチゴプリンパフェを作って配った。
悔し泣きから立ち直った部員たちをさらに励ましたのだ。

夜。
エースピッチャーの須藤(すどう)が持田に言った。どうしても言いたかった。
「はじめてお前のチョコレートパフェを食べてからずっと言いたかったんだけど、プロ注目のスラッガーの趣味がお菓子作りで秋葉原のメイドカフェを真似た台詞回しまであったら、ギャップ萌えで唯一無二の存在だとか狙ってやってるなら、流石にちょっとキモめ。」

持田は須藤に言った。
「それを言ったやつには絶対に教えているんだ。どうして俺がパフェを作るのか。」



いまから20年前。
持田権蔵の父親・持田蔵之介(くらのすけ)は、当時37歳、持病の精神疾患の悪化で入院した。
仕事はその前の年にクビになったきり。近所の建物に悪戯書きをしたり、公園の枯草に火をつけて遊んだり、それを警察署に通報しながら警察官に暴言を吐いたりした。
終いには家に警察官が押し入った。蔵之介は保護入院になった。

「社会は俺を理解してくれない。」

入院を理由に精神障碍者手帳が3級から2級に繰り上げられた蔵之介は、退院後に移った病院でデイケアに通いはじめた。

デイケアスタッフの前原(まえはら)は運動神経の悪くない蔵之介をフットサルに誘った。
「蔵之介さんの担当スタッフの前原です。どうでしょう、是非フットサルをやってみませんか。面白いですよ。」

蔵之介の参加する曜日のデイケアは、昼休憩をはさんで、午後はフットサルかお菓子作りのどちらかに参加して、社会復帰を意識しながら精神病や障害のリハビリをする。
蔵之介は前原の勧め通りに真面目にフットサルをした。
最初こそ真面目に参加した。
しかし二カ月が経ち、フットサルが目に見えて上達してきたタイミングで、暴言を吐いてしまった。

「上達なんて馬鹿バカしいことなんでしなくちゃいけないんだ。」

前原は聴くだけ聞いて、「よく打ち明けてくださいました。」と言うと、

「じゃあお菓子作りのほうに参加してみましょう。」

と言って、お菓子作りを勧めた。
蔵之介は、最初は真面目に参加していたが、やはり二カ月ほどすると暴言を吐いた。

「上達するのが嫌なんだ。馬鹿バカしい。仕事なんてできない奴の方が偉いのに、なんのために働くんだ。ふざけろ。」

前原は聴くだけ聞いて、「よく打ち明けてくださいました。」と言うと、

「顔色がどんどん良くなってきているなと思っていましたけれど、そんな風に悩んでいたのですね。気がつかないですみません。コンディションのよい日だけでも良いのでデイケアには来てください。フットサルでも、お菓子作りでも、よいので、好きな方に参加しましょう。自分の気持ち優先で大丈夫です。」

と言った。蔵之介は、聞いてくれた前原にお礼を言うと、その日は帰った。
そして自宅で思った。
「もう37歳なんだ。中学生がやるようなことをして喜んでいていいはずないんだ。」

蔵之介は、精神障碍者男性と理解者女性の婚活パーティに応募した。
なんとなく、自分を理解してくれるパートナーの女性がいればすべてが解決する気がしたからだ。
デイケアでも女性と話す機会はあったし、上手くやればいけるだろうと思った。強面だが不細工ではないし、いい結果になるだろうと思った。

何回か同じような街コンに参加し、蔵之介は、後に妻となる女性・智子(ともこ)と出会い、順調に交際し、結婚した。

結婚して一年経ち、無事社会復帰に至った蔵之介に智子は言った。
「ヤクザみたいな人かと思ったけれど、趣味の欄に『お菓子作りができる』って書いてあったから、大丈夫だって思ったのよ。」



すべてを語り終えた持田権蔵は、須藤に言った。
「親父と同じ顔で生まれた以上、解だから。」

須藤は言った。
「野球は自分で選んだんだ。それがよかったです。」
(おしまい)

ケツゲ王子

小学三年生の佳代子は、担任教師から酷い嫌がらせを受けてしまった。
大学を出たての、まだ若い教諭だから仕方がないのだろうか。
担任教師は、佳代子の目の前で、自分の、ジャージ姿の下半身に手を入れると下着の中からケツの毛をむしり取って、佳代子に見せた。

「かよちゃん、これが先生のケツゲ!」

担任教師は、どちらかと言うと暗い性格の佳代子を笑わせようと思ったのだった。
引きちぎったケツ毛を手のひらで差し出して、見せた。

佳代子はショックを受けてしまい、そのことを、夕飯のときに両親に言った。

「お母さん、今日担任の先生がケツ毛をむしり取って私に見せてきたの。」

「担任の先生ってすごくハンサムよね?・・・なんでかしら!」

すると奥の部屋で野球中継を見ていた伯父が食卓の居間にやってきた。

「かよちゃんは、そういう星の下に生まれた女の子なんだな!ほらっ!」

なんと、伯父も、ケツ毛をむしり取って佳代子に見せた。
引きちぎったケツ毛を手のひらで差し出して、見せた。

「かよちゃんは、イイ男がケツ毛をむしり取って差し出して見せる、そういう女の子に生まれたんだよ!」

伯父はそう言った。

「三人目が王子様だ。次にケツ毛をむしった男が、かよちゃんのための王子様だからね!」

伯父は、にかっと笑った。

その後。
佳代子は高校に入ると野球部の女子マネージャーになった。
同じ学年の男子部員と仲良くなり、友達以上恋人未満。
そのかいあってか、男子部員はチームの四番打者に成長した。
名は、野村と言う。

夜。夏の地方予選で決勝まで進んだ日の夜、明日の決勝戦を前に野村は佳代子を呼び出した。
よく二人で歩いた神社の脇道は、夜になると少し顔色が違うのも気にならないくらい、二人の心は一つだった。

「かよちゃん、甲子園って本当に違うな、行けるのかなって思うと、バットの重さも感じないが、手の甲から骨が飛び出そうなくらい今から緊張してる。」

「・・・野村くん。」

「かよちゃん、本当に好きだ。かよちゃん・・・」

ブチッッ!!!ブチブチブチッッ・・・・!

野村は、ケツ毛をむしり取って佳代子に見せた。
引きちぎったケツ毛を手のひらで差し出して、見せた。

「ケツに毛が生えている理由がやっとわかった・・・。かよちゃんにむしり取ってあげるためだとしか思えない。・・・好きになった日からずっと、ケツ毛をむしるのを我慢してた。」

佳代子は照れくさそうに言ったのだった。
「なんでそんな我慢したんだろうな。野村君じゃなくて、他の人がやってくれちゃったら、どうしてくれたんだろうな。」

(おしまい)

空蝉

高校の野球部。夏休みのグラウンドに一年生の部員がいた。
名は、羽田五作(はたごさく)と言う。
身体は大きく、中学では四番だった。
何の気なしに高校も野球部に入ったが、まったく練習に興味がない。
そういえば中学時代も身体が大きいだけで熱心な選手ではなかった。

蝉の鳴き声がする。
ちっとも涼しくない日の水しぶきのように、どこか清らかな音色だ。

「羽田、またそがいなところで涼んどるんか?」

結衣(ゆい)は高校から羽田と知り合った、クラスメイトの女子だ。

「結衣ちゃん、アイス買うて来てよ。」
「ふざけるな、ばかにしんさんな」

羽田と結衣は、グラウンドの隅、体育館わきの室外トイレの前で、よく出くわす。

「ここなら球も飛んでこんね。」

結衣がにかっと笑って、三段ある階段に座り込む。

「ほうじゃのう。」

羽田が嬉しそうに言う。

しばしの沈黙。
結衣は、少しゾクっとしたので、言った。

「エースの青柳先輩はカッコええね、凛々しゅうて素敵じゃ。」

羽田は黙ったままだったが、またしばらく沈黙してから言った。

「結衣ちゃん、ギターを弾いたらええよ、ギターをいっぱい練習したら青柳先輩が振り返ってくれるよ。」

結衣は四月に軽音楽部に入部していた。全く練習しないが歌は好きだった。
結衣は苦笑いをして、黙って頷くと、文化部の部室小屋に消えて行った。

結衣には友達が数人いた。クラスでは少し浮いていたが輪には入れた。
羽田は身体が大きいが、自分にも他人にもどこか甘いので好かれていた。

軽音楽部の部室で、扇風機が空回りする音に、幾ばくかギターの音が混ざりあうのをいいことに、結衣はつぶやいた。
「ひとりもの同士は嫌じゃ、さびしいけぇこれあげるはごめんだ。」
結衣は羽田が好きだった。

「なにをしとりゃあ羽田がどがぁでもよう思える。」

羽田はと言うと、バレー部にお気に入りがいた。
お気に入りだと言っても、声をかけもしない。
ただ彼女のスパイクもブロックも、たくさん練習した選手のものであることはよくわかっていた。
勤勉な子だと思って好きだった。
サボリ魔の自分とは不釣り合いだとわきまえていた。

軽音楽部の部室で、結衣はたくさんの音の中で、自分のクラシックギターを少し奏でてみた。

「何かが上達するやつなんて大嫌いじゃ。練習するやつは練習しても上達せんやつを馬鹿にしとる。羽田はでかいだけで威張りもせん。うちゃアイスじゃない。」

夏休みのある日、相変わらずサボっている羽田は、先輩に呼ばれた。
主将のサード小川(おがわ)だった。
小川はサボり魔の羽田のこともよく把握していた。
小川は言った。
「打撃練習をやる。やってみんか。羽田は打者が向いとる。走るやつ、打つやつ、守るやつ、全員揃うてチームじゃ。守るやつはどこを守るかまで決める。守るやつらでレギュラーが決まる。でも守るやつらだけがチームじゃないけぇな。楽しいでぇ。」

羽田は、喜んだ。
喜んで、打撃練習に加わった。
久しぶりに、腰を回転させて、腰の体重にボールを乗せるように打った。
ボールが軽く飛んでいくと、羽田は自然と笑みがこぼれた。

しばらくして休憩になると、羽田は、珍しく休憩時間を、部員の輪の中で過ごした。

エース青柳の前にも関わらず、堂々とする羽田は、勢い余って、言った。
「うちのチームは全国大会なんて行けっこんけぇ、練習もきつうない、楽しい。」

この言葉には一同が動揺した。羽田の人となりは知っていたから、危ういとまでは思わなかった。
大半の者がこう思った。
久しぶりに混ざって嬉しいのだろう。次の守備練習にも付き合わせれば、そんなことは言えなくなるだろう。
しかし青柳は、すくっと立ち上がると、険しい口調で言った。

「羽田、ポジションはどこじゃ?」
「ファーストでがんす。」

羽田は、青柳の剣幕に負けず、大してうろたえることもなく答えた。

「その前はどこじゃ?」
「ピッチャーでがんす。」

周りの者は、険しい口調の青柳に、そうとも思わず平気な羽田へ、ここで初めて、訝しげな顔をした。

「一緒にブルペンに来い。糸田(いとだ)、倉持(くらもち)、捕手をやれ。」
青柳は、全く練習しない羽田をブルペンに連れて行こうと言う。
ブルペンとは、ピッチャーの投球練習場であり、およそ羽田のようなサボり魔が上がり込んでスパイクの跡を残していいものではない。
正捕手の糸田と控えの倉持の二人が呼ばれるということは、青柳、羽田、糸田、倉持で投球練習をするということなのだろう。

なぜ。

その場で疑問が沸き上がるより、しかし主将の小川が早かった。
「休憩は終わりだ。実戦守備をする。ピッチャーは醍醐(だいご)がやれ。捕手はわしがやるけぇ。」

それを聴いた一同が声を合わせて「はい!」と返事をすると、休憩は終了した。

ブルペンで青柳は羽田に言った。
「わしが投げたら投げろ。もたもたしんさんな。」

青柳が一球投げるたびに羽田も一球投げた。
羽田は、青柳の隣でふざけたことはできないと思ったものだから、中学の途中までやっていたように懸命に投げたのだ。
しかし20球で青柳の真似などできなくなった。
青柳は、思ったよりずっと早くガタが来た羽田に、苛立ちを隠せなかった。
100球投げたあたりで、「どこが疲れてきた?」と聞いてやろうと思ったものだから、このまま無言でくたばるまで投げさせようと、頭を切り替えた。

しかし羽田には異様な根性があった。ハエが止まりそうな緩い球を、投球フォームこそ無礼のないようにと、80球まで投げた。ヘトヘトの羽田が81球目を投げる前に、先に青柳が82球目を投げた。
その後も青柳が一人で投げ続けた。83球目、84球目、85球目。
羽田と組んだ捕手の倉持は、立ち上がらず、「へい!へいへい!」とキャッチャーミットを構えるのをやめなかった。

青柳は100球を投げ終えると、投げるのを中断した。青柳は無言で、疲れ果てた羽田を見ていた。
捕手の倉持が、仕方なく、羽田のもとに駆け寄ると、言った。

「どしたん?」

「ああ、すまん、倉持さん、疲れてしもうた。」

すっかり、少年のように弱弱しい羽田に、倉持は青柳の顔を見て、言葉を促した。
青柳は言った。
「これくらい練習しとるのじゃ。あがいな発言を平気じゃるようではつまらん大人になる。同じ高校の同じ部活の先輩として、身内を守ったつもりじゃ。」

すると羽田は言った。
「わかる。ピッチャーをやらしてくれるわけじゃないこたぁわかる。」

倉持は、察して言った。
「毎日走れ。走るんならできるじゃろう。野球がさえんくせに野球部におるなぁなんでじゃなんてわし達はゆわん。身内にゆわんけぇなそがいなこたぁ。」

羽田は、この日先輩達に諭されてから、本当にひたすら走っていた。
夏休みも終わるころ、羽田はようやくお気に入りの子と話しをすることができた。
バレー部の清水(しみず)は、羽田とクラスは違うが、学年が同じだ。
体育館から出てきた女子たちの群れと、偶然、ばったり遭遇した羽田は、そのまま、その中にいる清水をボケっと見て突っ立っていた。
他の女子より頭一つ背が高い清水が、同じバレー部の部員の群れをかきわけて、真っすぐ話しかけてきた。

「いつも見よるな。なにか用事でもあるのか。」

羽田は、全く気が付いていないが、いつも母親を見るような目で見てしまっていた。
すぐに視線を切っていたつもりだったが、いつも、実は2秒くらい目と目が合っていた。
この日はいつもの倍くらい見つめてしまった。
清水は、女子達の間ではリーダーのような役目になることが多かったものだから、勇んで、どういうつもりなんだと詰め寄った。

振り切られた女子達は、別段普通だった。
清水のことだから、そういう手合いの男子は、まあ、いるだろうと思った様子だ。

「失礼のないようにとのぼせあがっとりまして。」

羽田は、少し考えてからそう言った。
清水は、顔に出ていないと思いたかったが、少し赤くなってしまった。
中学の途中までピッチャーだった羽田は、自分自身何度か経験のある、打者の苦い快音をここで思い出した。
清水が強い口調で言った。

「野球部は死ぬるほど真面目な人たちじゃけぇ平気でがんす。」

プイっと首だけ捻られてしまい、すぐに背中を向けられてしまった。

羽田は、あの日先輩達に諭されてから、ひたすら走っていた。
ただ、この一幕は小川に叱られた。
「他の部活と接触があるようなら、信用して走り込みをやらせられん。」

そもそもサボり魔の羽田だったが、小川は、ここぞとばかりに忠告して言った。
小川は部室小屋から持ってきた重いマスコットバットを渡すと、羽田に、その場で100回素振りをやらせた。
最後に小川は言った。
「持って走れ。走り込みの途中で足が止まったら、マスコットバットを素振りしていろ。野球部が誤解されんようにな。」

羽田は、夏休みの残りの期間、本当に言われたとおりに、やっていた。
ただ、なんの念力だろうか、グラウンドの隅、体育館わきの室外トイレの前で、頻繁に小休止をしては、マスコットバットを素振りしていた。
サボり魔だったころの憩いの場が、集中できるからだと言えば、その通りだ。
しかし、素振りをしていると必ずやってくる結衣の言い草が心地よかった。
「試合に出るのを諦めるまで見届けちゃるけぇのぉ。」

結衣は毎回テープレコーダーのようにそう言った。
羽田も、毎回テープレコーダーのように返事をした。
「さえん大人になりとうないだけじゃ。」

毎回二人の会話はそれきりだったが、ある日、結衣は意を決して言った。
「羽田、われは諭したらよいのか。」

羽田は、素振りをしていたから、自然と声を張り上げて、振り向かずに言った。
「なんか?」

つっけんどんにされた気がした結衣は、ムッとしてしまい、声を張り上げて言い返した。
「うちが来る思うて毎日ここで素振りをするんなら…」

カツーン

結衣が言い終わるより先に、羽田が、素振りのマスコットバットを、ヘッドを下にして軽く地面に突き立てた。
誤って落としたわけではない。
他の部活の声が遠くに聴こえては、こだましていくグラウンドの隅で、強い太陽に照らされる二人。
蝉の鳴く静けさの中で、羽田は、口を噤んだままの結衣に言った。

「軟派者じゃない。こりゃあ軟派者じゃないのぉ。」

「じゃあうちも違う。よろしゅう励むように。」

結衣は思った。
思ったよりずっと見どころのある羽田が、ただ真っ当な大人になりたいだけの姿を見て、生まれて初めて感じる勇み足のない感情が結衣の自分自身の中でコツリと居場所をつくって陣取ったことが、とても心強いと思った。

9月になって、二学期が始まった。
羽田と結衣は、以前よりよく話した。
自然とそうなるのを憚らずに、何より手と手が近かった、本人たちは気がついていないが、二人の手と手が空間の近くにある。

ある日、クラスメイトの河野(かわの)という女子が、昼休みに、結衣に言った。
「夏休みから、付き合い始めたんよね?」

結衣は、驚いた。
驚く結衣に向かって、河野はさらにまくし立てた。

「周りも気ぃ遣うとるみたいだけど、気にせんでええよ。結衣が羽田の近うをうろうろするのみんな知っとったし、なんじゃろう羽田も男前じゃのぉ。」

河野に向かって、結衣は言った。
「まだまだじゃ。」

河野は、そんな反応も範疇にあったのか、全く驚きもせずに、さらに返した。
「あれま、そがいな感じか。結衣のこと振り向いたのか思うた。われらよう知り合うてからという柄でもないじゃろう。なんじゃろいろきけるとおもって親切にしとったんじゃが。」

すると河野の友達の後藤(ごとう)が近寄ってきて、言った。
「そうよね、羽田のやついつも一人で夜遅う帰宅しとるもんね。野球部の関原(せきはら)が言いよったんじゃけど、羽田は野球部にまだ友達おらんけぇ一人で帰宅しとるんじゃ。先輩に叱られて練習はするようになって柄にものう新学期は夜遅う帰っとるんだってさ。」

結衣は河野と後藤に言った。
「うちの身に何が起きてもわれら面白いんじゃろうな。」

後藤は言った。
「羽田はどつきゃあ転ぶ思う。」

河野は言った。
「羽田は面白いけぇ見よるに限る。みんなそう思うて期待しとる。」

新学期に入ってから、羽田は、野球部の練習にも正しく顔を出すようになっていた。
夕暮れから夜遅くまで、自主練で素振りをしてから帰宅していた。
羽田は、主将の小川の「お前は打者だ。」という言葉と、エース青柳の「身内」という言葉に胸を打たれていた。
味噌っかすのような扱いでも、チームの一員だと信じられることが、ネジを巻きなおしたように頑なになっていたのだ。

夕暮れに、同じ一年の関原が、羽田に言った。
「罵声も浴びせられんくらい出鱈目なやつじゃったけど、一年の輪にそろそろ入れちゃろうか思う。来週あたり適当に飯屋にでも行こう。一食くらい余分に入るじゃろうその図体なら。」

羽田は、関原に言った。
「野球部の練習に、四月についていけんようなって以来、関原や他の部員が少しいびせかった。不甲斐ないものだが、また頑張りたい。」

関原は言った。
「四月は皆ライバルじゃった。ピリピリ、カリカリしとったな。誰がどのポジションやるか、実力に甲乙つけあって、けん制し合うて。しかしもうそんなんも終わった。わしが一年生のまとめ役じゃけぇ、不甲斐のうても仲間は仲間じゃ。」

羽田は、ここで、よっぽど関原には打ち明けたかったが、言わなかった。
野球にも色々あるもので、エースピッチャーだけが脚光浴びて、一番カッコいいとか、そういう競技でも全くないのだと、最近わかったと、打ち明けたかった。言わなかったのは、それではまるで自分が子どものようだと思ったからだ。

自主練は日が沈むまで、羽田は素振りをした。
素振りをしながら思ったのは、結衣のことだった。
結衣は自分より背が低い。
顎に米粒がついたときの目線の先に、それくらいの視点で、最近やけに結衣が、近くにいる。
男らしくなっていったのを自分でも感じていた。

カラーン

羽田は、素振りのマスコットバットを落としてしまった。
右手の握力が急になくなった、やりすぎたか。

「カッコ悪いのぉ。一人だけ何考えとるんじゃろう。関原と食べる飯のことを考えたほうがなんぼかマシじゃのぉ。」

羽田は自主練を終え、ユニフォームを着替えて、夏服の学生服姿で帰った。
羽田は、体育館わきのトイレの横を、通った。

羽田は人影に気づいた。
「なんじゃろうな、亡霊でもおるみたいに。いま帰るところじゃ。」

結衣が、待ち伏せしていた。
昼休みに河野と後藤に言われたのだった。
携帯電話の連絡先くらい交換しないとダメだと言われて真に受けていた。

結衣は、下を向いたまま、言った。
そんなことより結衣は、羽田について知りたいことがあったのだった。
「われは上達しとうて練習する側の人間なのか?」

「チームの一員になった、なれた。それなら練習も上達もしていかにゃあつまらん。」

「上達するような人間は嫌いじゃ。」

「ギター弾いたらええじゃないか。上手になったらみんなが聴きに来て気持ちええのじゃないのか?」

「なんじゃ、なんで変わってしもうたんじゃ、気持ち悪いわ。」

「・・・じゃあわしが聴いちゃるけぇ。」

羽田は、ポロっと言った。言った後でハッとした。
結衣は、ついカッとなって、持っていた携帯電話を振り上げた。
「なんでそんなことを平気で言うのか」と思った。思ったが言えず。
そのまま羽田の顔に携帯電話を投げつけてやろうかと思った。
しかし肝心の羽田の顔が全く動じていなかった。

「・・・なんでわしゃこがいな偉うなったんじゃろうな。」

そう言うと、羽田は、自分の左手がグンと伸びて、2,3メートルも伸びて、結衣の振り上げた右手をギュッと掴んだ気がしたので、さらに言った。

「結衣ちゃん、わしゃガールフレンドがおったことない。」

羽田は、こんなことを言う自分を「情けない」とは思わなかったし、いままで通りである自分に安堵さえあった。
ダメならダメで、伝わってほしいと思ったものが伝わるなら、それはそれで偽りない自分であると、後から後から、ジワリジワリと自分を肯定した。
結衣は、羽田が何も変わっていない「でぐのぼう」であること以上に、羽田が今二人でいる場所を大切にしていることを、理解してあげることができた。
羽田こそ、結衣が見てくれていると思って頑張ったのだから。
結衣にも見えたのだ、運よく校庭のライトに照らされた羽田のボロボロの右手が、言葉の情けなさとは裏腹のものが、しっかりと目で見抜かれたのだった。

「真面目なやつのほうがええにきまっとるけぇ、今日は一緒に歩いて帰ろう、ずっとこがいな日がくると願うとった、ギターも本当は聴いてほしい、うもうなれるまで聴いてくれるなら、嬉しい。」

結衣は、顔がボタボタとただれ落ちてはいないかと、思った。
顔じゅうの熱が、心臓を焼き尽くすように、のどに降りてきたのを飲み込むように、言葉を詰まらせて、羽田とは逆方向に走った。
しかし、すぐに引き返して羽田の方に走り寄った。

羽田の目の前でうなだれて、顔を見ずに言った。
「いやらしいこたぁ期待しんさんなや。」

羽田は、向かい合った結衣の左肩に、右手を添えて、「承知した」と言った。
結衣は、その時の羽田の右手の感触を、いつまでも覚えていることになる。

(おしまい)

逆にアメリカン

ジェシカ。
アメリカ育ち。
しかし日本人である。

タレントだった。
テレビ番組にでる系統の若い女性タレント。

ジェシカのチャームポイント。
これはアメリカン。
なにに対してもそのように言う。

この足裏マッサージ。
アメリカン。
すごくアメリカン。
などある。

ある日。
旅。
そういうテーマの番組で。
和室。
和室が紹介された。
日本コテコテの和室。

一見すると。
東山文化。
武家造りになっていて。
そのうえで。
千利休が好きそうな雰囲気が。
どことなく醸し出されていた。

ジェシカはその番組で。
言った。

和風過ぎて逆にアメリカン。

会場がドッと笑った。
意味がわからないと大喜びのMC。

しかし。
こう思う。
ジェシカは。
こう言いたかったんだと思う。

この和室はあまりにもあざとく和風なのでむしろアメリカ人が造ったとしか思えない。

独りでそんなふうに考えていたら。
独りで大変納得してしまった。

そういえば。
アメリカ人のほうが村上春樹をよく理解している。
でも村上春樹風に日本語で作文しろって言われたら。
たぶん日本人のほうがまだうまくやるんだろうな。

そういえば。
経済学ってなにって学生にきいたら。
数学ですとか言って。
それは村上春樹はなにってきかれたとき。
日本語ですって答えるのといっしょだって。
言ってやったんだった。

おしまい

ティゴク・ニオティーロ

ある国の権威ある数学者ヒャヤック・ティネ・ビャッキャロは、若き天才ティゴク・ニオティーロと、ある数学の未解決問題を巡って競っていた。誰も証明したことのない数式だ。二人は帝国ホテルの別々の部屋に閉じこもり、解けるまで誰とも会ってはいけない一騎打ちをしていた。国王の主催した公式な勝負だ。ある日の晩、ティゴクはその数式を証明できた。しかしティゴクの部屋にはヒャヤックの仲間が仕掛けた監視カメラがあった。ヒャヤックの仲間達はヒャヤックに正解を教えると、ヒャヤックは絶対に消えないペンで、バスルームの壁に証明を書き始めた。ティゴクはヒャヤックの鼻を明かそうと、からかうためにヒャヤックの部屋に行った。ティゴクは、夢中で同じ数式を書いているバスルームのヒャヤックに驚くと、咄嗟にヒャヤックを撲殺した、そして自分のペンで続きの証明を書き、書き終えた。犯人は数式を解くことができた者だ。ティゴク・ニオティーロは名誉と引き換えに無罪になった。ティゴク・ニオティーロはその後チェス棋士に転身して有名になった。ある年の世界大会で言った、「優勝するのは私だよ、皆が観ているからね」。

いらねぇ

猪狩真一(いがりしんいち)は働いていた。
半月前から。
死ぬ気で働いていた。

その日。
ある女性が言った。
「そんなに頑張ってくれていて心強い」と言った。

猪狩は、思った。
ふざけるな。

猪狩は派遣労働者だった。半月前から新しい現場だった。
しかし正社員に応援されるのは我慢ならなかった。
そもそも足の怪我さえなければ営業で駆けずり回っていた人生。
悪く言えば電話番しかできなくなった自分なりに、最大限折衝のような真似をしている。

何かあると保護される分際の女が。
結局偉い偉くないの社会でよくも言いやがった。

次の日。
先日の女性が猪狩のネームプレートを持ってきた。
猪狩が前日机に置き忘れたネームプレート。
猪狩はうんざりだった、たたでさえこんな名前ぶち捨ててしまいたいのに。
それでつい言ってしまった。

「いらねぇ」

その日の夜。
猪狩は路上でボソッとつぶやいた。
俺は、俺が間違った人間だということにされて死んでいくほうがいい、ただし何人倒してそうなるのか興味がある。

猪狩は、かけつけた仲間達に肩を抱かれて、アパートに引き上げていった。
仲間の一人が、猪狩の忍耐の無さには一切触れずに、猪狩に言った。

「猪狩が本当に欲しかったものを知っているのも限界だ。だから猪狩とは今日でお別れだ。」

そして猪狩に言った。
「新しい名前だ。」

猪狩に手渡されたネームプレートには「野生のウーマンマン」と書かれていた。
ウルトラマンとかグリッドマンみたいにヒーロー的なコンセプトだ。
そのうえで、野生のウーマンというコンセプトのようだった。

猪狩は思った。
「なんで俺ばっかりこんな目に」と思った。
そして言った。
「俺もこれくらいやってやる、やってやるよ。」と言った。

猪狩は、自分が「野生のウーマンマン」だと思えば何でも我慢できる気がした。
そしてひそかに「猪狩真一」だった自分自身と決別した。
捨てた。
いらねぇ以上。

試練

大きな人物になるまえに大きな試練がやってくる。立ち上がれなければ這ってでも進んだものに道がある。

園田は。
俺もやってやる。
やってやるぞ。
と言った。

聴いていた烏丸は言った。
凄いなぁ。
そんなこと考えて。
園田ならできるよ。
絶対にできるよ。
そう言って笑った。
笑って見せた。

烏丸は、一足早く昼休みに出た。
駅前の日高屋。
少なからず混んでいた。
他人と隣接しなければならない。

烏丸は。
少し歩いた所にある松屋に向かった。
松屋も同じような状況だった。

烏丸は少しイラっとした。
セブンイレブンに行った。
空いていたので少し長居をした。
何を食べようかな。

やがて食糧をもってレジに並ぼうとするとレジが長蛇の列になってしまっていた。

おしまい

罪なき歌声

ふぁ〜らぉ♪ふぁらお♪

旅の一行。前列中央にツタンカーメン装束の男性。付き従う沢山の乙女たち。

あなたは誰ですか?
ふぁらおです^ ^

すると後ろの乙女たちが歌い出す

ふぁ〜らぉ♪ふぁらお♪
ふぁらおふぁらお♪

何やら楽しそう
人々が集まります
皆口々に
ふぁらお♪ふぁらお♪と呼びます

ふぁらおが言いました

3回は呼ばないでくださいね^ ^

笑う人々
ある男が笑いながら呼びました

ふぁらお!ふぁらお!

え?^ ^

ふぁらお!!!

次の瞬間男の頭が爆発しました。
ババーン!
三回呼んでしまったからです。

すると後ろの乙女たちが歌い出す
ふぁ〜らぉ♪ふぁらお♪
ふぁらおふぁらお♪