月別アーカイブ: 2021年10月

偏差値もボーダーラインもない入試

統計なき

編入学試験は、どんな問題が解ければ合格なのか?・・・これがわからないです。たとえば高校入試の数学で「三角形の相似の関係を見出しながら線分比を答える平行四辺形の描かれた平面図形の問題」の正解率が5割を超えることはありません。もしも正解率が2割であれば、偏差値50(上位50%)を目指すにあたって解かなくてもよい問題、偏差値60(上位17%)を目指すにあたって正解したい問題、偏差値70(上位2%)を目指すにあたって不正解が許されない問題です。しかしこうした分析は「正解率」と「偏差値」が必須です。しかし編入学試験にはなくできません。どんな問題を解ければ合格するのか正確なことは誰にもわからないのです。

中学生レベルという現実

問題です

現在では多国籍企業の世界展開が加速しているが、それによる問題も生じている。多国籍企業の世界展開によって生じる問題にはどのようなものがあるか。以下の内容をふまえて説明しなさい。

2019年4月10日にニューヨーク国連本部にて、”The Future of Work”(仕事の未来)と題されたILO創立100周年記念のハイレベル・イベントが国連総会によって開催されました。テクノロジーの発展や環境問題などで急激に変化しつつある今日の世界で、労働の需要なども大きく変わりつつあります。現実問題への理解を深めて、人間としての尊厳が守られる公正で道義的な仕事が約束される未来のために、どんなポリシーが効果的かなどを話し合う目的で開かれました。
今日私たちは、格安な衣類から輸入食品まで何でも簡単に手に入れることができます。しかし、一見豊かで便利な世の中でも、その下には弱い立場の人びとの人権をふみにじる、ゆがんだ不正義の世界が何層もひそんでいます。同じ地球にくらす仲間の人間が空腹や疲労や屈辱にじっとたえている現実をよそに、金銭的利益だけを追求する経済・ビジネスモデル、そしてそれに執着する企業や政府・そんなグローバル規模の現状を変えるには、私たち一人ひとりが意思を持って立ち上がるしかありません。【出典:2020年お茶の水女子大付属高校入試問題より(一部改訂)】

中学生レベル

解答例として、人件費削減のために、発展途上国の貧しい労働者を安い賃金で長時間働かせている、など書くことができます。

進歩

編入学試験で意識的に日東駒専など目指す受験生へ。最も効率の良いスタートとは中学生レベルの復習です。不合格になる中堅私大受験生の典型が「やっていられるか」と拒絶。しかし中学生レベルとは、受験生の具体的な中学時代を指して「進歩がない」と言うわけではないです。

何より求められる正確なボキャブラリ

問題です

(  )に当てはまる語句を答えなさい。

デジタルマネーで、給与を払えるようにするための規制緩和が検討されている。企業による給与の支払いについて、労働基準法は現金を使うことを原則として定めている。現在普及している銀行口座への振り込みも法律上は例外扱いである。政府はこの例外対象にデジタルマネーを加える考えだ。デジタルマネーとは、貨幣を使わずに電子情報のみで代金を支払う仮想貨幣のことである。
政府は2019年度の実現をめざしているが、お金を預かる資金移動業者が破綻した場合にすぐに現金を引き出せる仕組み作りが難航している。資金移動業者を所管するのは金融庁で、労働基準法を所管するのは厚生労働省と所轄官庁が異なり調整が進んでいない。
デジタルマネーでの給与支払いが可能となれば、(   )労働者の利便性が上がると言われている。銀行口座の開設に手間がかかる(   )労働者にとってはデジタルマネーの方がスムーズに給与の支払いを受けることができる。また欧米に比べると遅れている日本のキャッシュレス決済の比率を高めることにもなる。
この規制緩和によって、給与振込みを中心に預金を集めてきた銀行のビジネスモデルに変革がもたらされる可能性がある。【出典:2020年東京学芸大学附属高校入試問題社会科より一部改訂】

答えは外国人、ところで

理解出来た受験生に「規制緩和」の意味を改めて質問すると正確な解答者は100%もないです。しかし文章であれば前後文脈で読めてしまいます。そして論述で積極的な者はなんとなく読めてしまった日本語を果敢に使います。

「規制」の意味
「緩和」と「強化」の区別

最低限です。学生の誤用に「当局が規制していない物事」や「正しくは規制強化にあたる物事」を指して用いるなど典型的な誤用です。

ディフェンスに定評のある3年の池上

守備要員3年生が全員「池上」という名前とは限りませんし、同校3年生「池上」が全員守備力に定評のあるバスケットボール選手とも限らないわけですが、「貨幣を使わずに電子情報のみで代金を支払う仮想貨幣」と言われると「仮想貨幣」という専門用語を一つ知った気になれるかもしれません。しかし本当ですか、そういう語彙力の養成は確実に危険です。酷いと「それは仮想通貨と同じだから仮想通貨と同じ意味の言葉なのだな」とやってしまう者もいます。

闊達な議論のできる学生になる

考えてくれたよ

日本大学経済学部志望の学生クラスで税制の講義。経済学用語の「受益者負担」とはなにか。「鹿せんべい」が高価格である理由は奈良公園を保全するコストを賄うためだという考え方を説いた。すると学生からは「SNSにアップされた動画で鹿を楽しむ者はフリーライドしている」と面白い返信をくれた。Twitterで奈良公園の動画を視聴して楽しむに、鹿せんべいを買っていない事実は、高額な鹿せんべいをタダ乗りしていると言う。仮に鹿せんべい代で奈良公園の保全がとうとう追いつかなくなり奈良公園が閉鎖になったら、実際には来訪していない大勢が困ると思うのだと言う。そこで鹿動画に募金広告を掲載すれば良いのではないかと説いた。そこで彼は、それで解決するかはどうあれ、「受益者負担」とはなにかなんとなくわかったと言う。

合格する

編入学試験に合格する学生に必要なものは2つある。
1.自分の考えを正しいとし大なり小なり他人を共感させられる、あるいはそのような考えを生み出せる器量
2.そのうえで他人の考えと大なり小なり共感してみせる度量
「鹿せんべいは奈良公園の保全」と講師が言ったときに「はい先生」とノートを取る(そしてだいぶ後になって試験に出るんですよねと訊く)ような学生や、開口一番「違います(と言わんばかりになんでですか?)」という学生は典型的なダメ受験生である。

高度な作業

しかし編入学試験に合格するために必要な知識の(正確な)インプットを怠ってもよいということにはならない。講師の言い分を正しいとも間違っているとも思わず丁寧に頭の箱に入れておく、しかし事実的知識は正確にピックアップして正確に暗記していかないといけない。編入学受験生の知的作業は異様に高度である。

オンライン編入予備校の歩き方

本当に指導できるんですか

ZOOM講義。ZOOM相談。オンラインを展開する編入予備校は、中央ゼミナール(高円寺)、ECC編入学院、日本編入学院など。現実に教室を構える学校法人であれば、個人情報管理、教材、講師を目でみて確認することができます。オンラインのみ展開する編入予備校は個人情報管理、教材、講師について、不当不正なものではないだろうか、不安もあると思います、極論犯罪には関わりたくありません。

しかし、オンライン編入予備校を(利用する/しない)を考えるには本末転倒です。教わるのだから、指導力(ある/なし)で判断すべき。編入学の受験勉強とは大学1~2年次レベル、教える側は大学院レベル、高度な専門性が要求されます。店舗有無を問わずオンライン編入予備校を歩く人が直面するリスクは、犯罪リスク、というよりはむしろ、専門性が準備できていないにも関わらず堂々サービス展開された【地雷】を踏むリスクです。かなり個人的な事を言えば、むしろ、たかがインターネット犯罪を回避できないような人は【地雷】に至っては全く躱せないと思います。

サポート可能校

弊学院が手厚くサポート可能な受験校に日本大学経済学部があります。過去問保有、過去問研究、編入生解答例、編入生体験記など一式揃っています。千葉大学文学部は編入生解答例、編入生体験記こそあるものの、それ以外が準備不足で【サポート可能校】という位置付けが難しいところです。中央ゼミナール(高円寺)など大規模店舗型でも【サポート可能校】という考え方が当てはまります。大学院レベルの高度専門性は必須だとしても継時的な指導経験がないと難しいものなのです。

少し自分でやってから相談する

オンライン編入予備校を頼るまえに、志望校の受験対策を少し自分でやってみましょう。直近数年間の合格者数、受験者数、前年度過去問題の内容。ここで「明治大学情報コミュニケーション学部2年次編入の対策ができるか」と聞いて「できる」と応答あれば上記3つ正しく把握できていることを確認すればよいです。「何人受かりますか」「何がでますか」など。自前の情報と相違なければそこから先も知っていると信じてよいと思います。そして知りたいことを訊いたらよいと思います。

中央ゼミナール(高円寺)について

業界最大手の苦悶

中央ゼミナール(高円寺)は、編入学予備校の老舗、30年以上の実績で業界トップ、通信課程も厚く都内一店舗で全国的なユーザを獲得し業界随一。大学教員や著名人が出校し講義も中ゼミはハイクオリティ。他塾が高校教諭(非常勤)で講師陣を固めるなか一線を画した「教える」のスペリオルから絶大な信頼がありました。経済学分野はミクロ・マクロ経済学講義で神田外語学院(専門学校としては国内随一の編入学実績)の柿坂氏を起用。中ゼミは陣容の厚い老舗、実力派精鋭予備校でした。

しかしそれは何年前の話。競合にシェアを大きく奪われ続けた現在。経営難から講師が離職する一方の中央ゼミナール(高円寺)。元講師や元中ゼミ生らが積極的に同予備校の内部情報を(中には秘密情報に近い情報もあったに関わらず)インターネット上で公開、漏洩発信してしまって・・・さらにそれに呼応するように出店した競合の敵対的営業戦略に対して、まったく太刀打ちができませんでした。

たとえば「集客」といった議題で・・・「中ゼミとは編入学情報そのものを売っている(私たち中ゼミは情報屋である)」という立場に頑なでした。編入学情報で競合他社より優れたパテントがあること、それを最大の強みとしていました。実際「教える力」で凄まじいスペリオルがあったのですが「情報屋」としての横綱相撲を選んでしまったのです。情報は原則クローズド。入学後にアクセス可能なスタンスを貫きました。

小さい学習塾(編入)ほど、過去問題の保有からして限定的です、企業や学習塾であっても現地に赴かなければ一切提供しない大学は多くあります。確かに中央ゼミナール(高円寺)は実績と信頼と人海戦術で過去問保有は非常に手厚いものでした。しかし、たとえばECC編入学院は看板講師のTwitterアカウントをサテライトにして過去問題を含む編入学情報の無償提供を積極的に行いました。そのような情報提供の部分を無償で行う道を選んだ競合他社は枚挙に暇がなく、ユーザは単純に安価でオープンなものを好みました。

志望理由書はガチ

中央ゼミナールが奨める志望理由書の書き方は、様々な予備校や専門学校で承認されるフォーマットです。ここで承認とは、つまり志望理由書の書き方について100%正しいフォーマットが確定していなくて(冷静に考えれば当たり前ですね)、しかしおよそこのように書けば好印象だよという点で、競合他社や専門学校(大学編入コースのあるところ)からOKに近い承認が得られているという意味です。