受験体験記(寄稿)

はじめまして私は、ツバサと申します。この度は体験談を記させていただきました。ご査収ください。

編入学試験を受験しようと思った本当のキッカケ。私は、東京都の私立大学、美術大学に通う一年生でした。もともと、コンクールで優秀賞を受賞したり、美術部員だったりして、絵は得意でした。本当は、地元の国立大学で歴史学を学びたかったのですが、高1のときに男子生徒から暴力を振るわれて、ショックで一時期不登校になったことがありました。なんとか勉強に復帰するために絵画に逃避していました。

大学一年生のころ、インカレのイベントで知り合った都内の私大生(女子)と交際を始めました。彼女は、ゆめきちといいます。彼女は演劇部に所属していて、背が高く、素敵だなと思いました。交際が始まってから、私は精神面でドンドンと回復していきました。前はすごく痩せていたのですが、女子らしくなってきたかなと思いました。ゆめきちには、「ありがとう」と言うべきなのかな。ゆめきちも友達の延長で女子といる時間を楽しんでいるように思えて、変な話ですが気が楽でした。心や内面が昔に戻るにつれて、もともと勉強したかった歴史学にほんの少しだけ興味が湧いてしまいました。編入。ここで編入を知るのですが、Twitterで「日本史の編入は一橋の赤本を使うといいよ」という噂が流れていました。書店で購入して机に置いた瞬間、なんだろう、自然と涙がこぼれました。「これじゃ高校生じゃないか。」

私はある夜、ゆめきちと二人で渋谷で遊んだ帰りの田園都市線で、終電だったのですが、車両で二人になりました。編入の勉強していること、伝えなきゃいけない気がしていました。するとゆめきちは、右手を伸ばして、私の右腕を背中から、優しく握って、耳に頬を寄せていいました。「女の子と付き合うなんて夢にも思わなかった。男子とは、ずっと冷めた恋愛だった気がする。心が焼けるようになるのが、まるで身を任せるように確かな感覚だ。」

私は、打ち明けなければいけないと思いました。しかし、ゆめきちは、とっくに知っていました。私に寄りかかったまま、「どうして?」という声が聞こえるくらい、静かに泣いてしまった。私は、私の駅で、二駅先のはずのゆめきちと降りました。

次の日の昼間に、やっとゆめきちは話してくれました。私が思っていたよりずっと、ゆめきちのほうがセクシャリティに悩んでいて、演劇をするのも、中学時代に患った解離性の健忘を前向きに考えながら周囲の反対を押してはじめたことだったのだと言ってくれました。私は、私のほうがゆめきちにはなくてはならない存在になっていたことに気が付きました。台所のシンクでコップを片付ける背中が、いつもの少し大きな背中が、傾いたせいなのかな、一瞬小さくみえたとき、何もかもわからない自分を知りました。女子同士って、どういうことなんだろうな。さっぱりわからない。「これじゃ高校生じゃないか・・・『そうだ、そんな気がします。』」

私は、見送った東京の空に言いました。ゆめきちのほうが大事だ。

編入学試験は、地元の国立大学ではなく、ダメもとで、都内私立の超難関校にしました。高校生だもんな。合格は、面接で「美大から」という所を徹底的に突っ込まれてしまい大苦戦してしまったせいかもしれませんが、筆記はできた気がしましたが、不合格。次の年には、学士編入のみになってしまったので、もしかするともともと厳しいところだったんだろうか、そういった下調べを全然誰にも相談しなかったなと思いました。

ゆめきちは、すごく大人に見えたんだけどな。ずっと一緒なのかな。神さまがいたらいいな。叶えてくれる神さまが叶えてくれるといいな。そう思って、池袋の公園で、ぼんやり空をみていると、もうゆめきちしか心に住んでなかった私は、涙が止まらなくなりました。心が、凍えるように寒い。LINEを読んだら、沢山の文字の中に閉じ込められそうな、不安がありました。ゆめきちが5分遅れて到着したときには、何もかも洗い流されたように、スクっと立ち上がりました。今日は、この手が叶えてくれた、握り返す私の手、ゆめきちを描こう。ずっと何枚も描こう。

おわり。

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