オドンネルとシュミッターの民主化研究
オドンネルとシュミッターの民主化研究とは、1986年共著 “Transitions from authoritarian rule: Comparative perspectives”(O’Donnell & Schmitter 1986)であれば、権威主義体制の崩壊過程に関する彼ら一連の研究である。権威主義体制とは、被治者(個人や社会組織)が、指導者(一名から少数)に服従するに指導者の持つ「権威(=他人を従わせる威力)」に服従しているとして、その政治体制のことである。権威主義体制の崩壊過程とは、一つの政治体制(権威主義体制)と他の政治体制への移行過程である。特にオドンネルとシュミッターの民主化研究は「自由化」と「民主化」を明確に区別したうえで独裁(両者の度合いが低い)から政治的民主主義(両者の度合いが高い)までの中間的形態として過渡期的形態を定義してみせた。1980年代当時世界中が注目していた「どのようにして民主化が起こるのか」というテーマに取り組んだという意味合いで独創的な研究である。また1980年代頃の比較政治学研究の流行は70年代民主化を経験した南ヨーロッパ(ポルトガル、ギリシャ、スペイン)に関心を寄せるものであったが、オドンネルとシュミッターの民主化研究はそうしたスペシフィックなもの(c.f.事例研究)というよりはむしろユニバーサルなもの(c.f.理論研究)を目指したという意味合いでも先駆的取り組みであった。その一方で国際関係論の文脈で語られる冷戦崩壊後(1989年以降)東欧民主化の事例を説明するに、オドンネルとシュミッターの民主化研究(国内政治的要因(c.f.タカ派とハト派))では説明力が弱く課題となった。【参考】